雪室について
 前期、いろいろな雪の調査と研究を通して、豪雪地域で使われている雪室の存在が分かった。ただ、ほとんどが写真に載っているように、大半は貯蔵庫として存在していて、ただの倉庫のように建築から独立している。人間の活動空間と繋がっているものはない。これからの設計で、雪室の形を生活空間の一部にしたいと思う。
その理由
 総括すると以下の通り。雪対策が客観的に必要とされている。自然落雪式雪室の設計によって、生活上の雪問題が改善できる。雪エネルギーは環境に優しい。そして、地域特性を持っている。
その成立性
 小規模住宅空調設備用の雪室はまだ一つもないため、平均温度に基づいて仮定した温度差で定常計算し、理論上の実現可能性を検証した。
必要な貯雪空間
必要な降雪を受ける面積
必要な断熱性
を計算してっ見たら、結構大きな空間が必要だが、無理ではない
断熱材ロックウール500mm使用で、辺長5.3メーターの立方体空間がギリギリ足りる。
更に熱伝導率1/8ほどあるの真空断熱財があるから。検証はこの程度で終わりにする
 雪室の応用については、建築の規模が大きいほど適切だが、小規模の戸建て住宅からさまざまな種類の建物を自分の研究テーマと関連させて設計してみたい。研究成果をより豊かに示すこともできる。卒業製作には、積雪建築をシリーズ作品にしたいと思っている。





敷地風景について
 敷地は新潟県越後湯沢駅の近くを選定する。町は道路に沿って西北から東南に向かって貫いている。道路の左右には遠くに山脈が広がっている。
 写真からわかるように、敷地東側の風景は少し雑然としていて、デザインでは地形や積雪、開口部などの配置を使って隠蔽するつもりだ。





ボリュウーム検討と雪壁
 天候の変化に伴って建物の表情も変わる。灰色部分は細密な網状構造で、夏には建物の中央に完全に空気が流れる中庭が形成される。冬になると網に自然に積雪し、傾斜角度によってより厚い積雪が生じる。それにより外気を遮断し、自然に雪の壁が形成され、新しい室内空間が生まれる。
眺望のカップセル
  
  これは客室からより多くの景色を楽しめるように考えた提案だ。冬季の利用者の90%以上がスキーを目的とした訪問者であり、その中には一人で来て安価な客室を求め、相部屋を選ぶ人も多い。だが、初対面の人たちとプライベートな空間を共有するのは、必ずしも快適ではないかもしれない。そこで、美しい景色の方向に限られた開口部面積の中で、カプセル型の個室を導入し、より多くの人がプライバシーを保ちながら景色を楽しむことができるようにしたい。限られた開口部を最大限に活用し、より多くの人が私密な空間で美しい眺望を享受できる時間を提供する。
  観光客が旅館を利用する際、半分以上の時間を自分だけのプライベートな空間で過ごす。その中でも特に大切な時間は、寝る前と目が覚めた瞬間だろう。例えば、雪の降り積もる静かな夜に、暖かい部屋で舞い落ちる雪を眺めながら眠りにつき、翌朝、目を開けたその瞬間、立ち上がって窓辺に行くことなく、ただ頭を横に向けるだけで一面の銀世界が広がる――。時間も空間もほとんどゼロ距離で感じられる、そんな体験は、きっと人々の心を揺さぶる、感動的で素晴らしいものになるだろう。



融雪道
 融雪道は除雪作業を回避し、楽な雪国生活を作るための外部装置だ。地下水を利用して、周囲より約2センチ低く水が流れる水の道を敷地内に設置する。雪が積もらず、通行できる上に、設計により敷地内の積雪を造形できる。もっと寒い場所では水が凍るため、新潟県周辺でしか応用できないデザインだ。敷地の西側には小川が流れていて、画面の左側の敷地境界線から2mの位置にある。もし川に排水できれば、敷地を貫く流水道を設計するのも良い感じがする。
研究の立ち上げプロセス
 「建築は生命力を持つ」。それは人間の感覚から与えられるものであると思っている。素材の経年劣化、植物成長、四季循環など、感じることの多いこの時間の動態を、建築の感覚を豊かにするために使うことはできないだろうか。
 卒業制作を経て検討した原始の自然環境と人間生息地の関係を続いて思考した。人間は建物を建てて人間の活動の痕跡を大地に残し、つくられた空間で生活して「使用の痕跡」を残す。 しかし、建物空間自体に関しては、建てた瞬間から形の成長が固定されている。 長期間使用しても、形体に痕跡が残るだけである。建物は居住者の活動に合わせて時間の経過とともに「成長」するような設計手法ができないかとも考えている。この「成長」を実現するよう、建築は利用者から影響を与えられるだけでなく、住宅の存在にとっても積極的で持続可能な方法でなければなりません。自然環境は常に人間の活動により変化し、生き生きとしたダイナミックなシステムですが、こんな長時間中に発生する環境変化の過程は人間一人の個体としては体験できない。本課題で時の流れがもたらす変化を分析再構築、住宅環境に引き込み、居住者たちに感動させるのはできるかと研究したい。現代の生活環境の中で、建築空間と自然の時間性が共存するのため建築空間のポテンシャルを再構築したいと思う。これより住宅建築を人間が時間に対する感覚に寄り添い、より多くの居住価値を提供する。
 研究調査の過程で、降雪地域では「雪」が常に住民にとって生活上重要な問題として扱われていることに気づいた。そして、それが多くの日常生活の不便を引き起こしている。この問題は、建築設計の視点から解決する価値が非常に高いと感じている。
 清原 潔(1964)は、豪雪地帯の建築につい以下のように述べている。「私共北国人は,長年に亘り,それぞれ多少宛設計を異にする建物につき、数限りなく多種の屋上と家屋廻り積雪の姿、またその変貌から消雪に至る経過を,繰り返し繰り返し見てきた。そして積雪のために、生活上随分と色々な支障に悩んで来ていながら、建物の対雪設計に関する住民の不平不満は案外少ないし、建築家の方でも、対雪設計改善にあまり積極性を示さないのは不思議である。」
 ここで考えなくてはいけないのは、生活に悪い影響をもたらす積雪を上手く活用できないかということ。冬の時期、人々が雪を敵とみなして取り除こうとするのではなく、建築自体がこの季節と調和し、積雪を受け入れ、それを活かして更に建築を際立たせる方法について考えるべきである。
 利雪·  雪を資源として有効に利活用すること。
 克雪   降雪、積雪に伴う被害や問題を克服すること。
 亲   雪に親しむこと。雪を使って楽しむこと。
 建築デザインの手法を用いてこれらの三つの言葉を十分に一つ建築にて一体化させて、様々な積雪地域における生活問題を解決しつつ、降雪現象を最大限に活用し、建築と雪との新たな対話を築いて、未だかつて実現されていない積雪の生活空間を創造することがこの研究の目標としてどんどん明確になってきた。


 
「利雪」の広まり
  1997年に発行された「利雪技術の展望」によれば、「利雪」という言葉は1981年の豪雪(五六豪雪)を契機に、豪雪地帯に同時発生的に芽生えたとされ、自治体にも「利雪」の考え方が歓迎されて利雪の事例が各地で掘り起こされたと書かれている。また、1991年の「豪雪白書」では利雪から始まり、雪が資源エネルギーであると認識が強まったとも書かれている。また、2001年9月の「月刊 基礎知識」によれば、1988年に改訂された「豪雪地帯対策基本計画」で「克雪」から「利雪」へと考え方を転換し、1992年には豪雪地帯特別措置法 (豪雪法) も改正され、「利雪」という用語が初めて法律に盛り込まれたとも記載されている。
 しかし法律として言葉が盛り込まれ、「利雪」という言葉が普及するまで雪を資源として活用する事例がないかと言えばそうでもない。雪氷(58巻6号)の新潟県での利雪事例によれば、江戸時代から特産物の縮を雪上においてさらし、雪面反射光を利用して繊維の漂白を行 っていたことが「北越雪譜」に述べられている。また、長岡市では1930年には雪鳰(ゆきにお)という雪貯蔵施設が市内に四箇所設置され、貯蔵された雪は魚屋の冷凍やキャンデー作り、病人の氷のう用に切り売りされたともされている。
積雪研究調査のいろいろ
参考文献:
利雪の事例・雪を邪魔者ではなく資源として活用する雪国の未来2022-12-02 https://snownotes.org/risetsu/
「建築と雪」清原 潔(1964)(「雪氷」pp:150)
やまがたゆきみらい機構(2008)『雪対策に関するアンケート調査結果報告書』
公益社団法人雪センター機関紙ゆき(2015) 『雪対策最前線 雪と闘う人々』

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